箱主さんブックフェア

テーマ:あなたの人生に影響を与えた本

箱主さんブックフェアとは

定期的に変わるテーマにそって、箱主さんがセレクトした本が並ぶHONBAKOのお店の人気コーナー。今回のテーマは「あなたの人生に影響を与えた本」。心が震えたり、感動したり、励まされたり、腑に落ちたり。本との出逢いが、自分一人では辿りつくことの難しい、視野や、価値観、見識に触れ、深めることにつながるかもしれません。

全世界の人たちに紹介したくて、本まで出すことになった本

「何とか平易な文章で、あらゆる世代にこの本を読んでほしい!」という推し愛が高まりすぎた結果、自分で本を出すことになった、というのが、このエピソードのあらすじです。

この本の第一印象は「とにかくムズい!」、翻訳文が難解。なのに「とても重要なことが書かれているぞ~」という香りがぷんぷんするので、食らいついてでも読みたくなる、そんな一冊。それがミルトン・メイヤロフ『ケアの本質 生きることの意味』(ゆみる出版)です。

「この本は訳文の難解さで損をしている!」と勝手に思い込み、「じゃあ、【新訳】、【超訳】という形で出版したらいいんじゃない?」と原著を取り寄せ、コツコツ訳すこと二年。で、できあがったものを見つつ「これ、どうするよ?」となり、清水の舞台から飛び降りるつもりで、翻訳権を持つ出版社に送りつけるという暴挙に出た私(推し愛っておそろしい・笑)。

すると、それを読んでくれたゆみる出版の田辺さんが「これはこのまま出せないけど、あなたには(ケアについて)言いたいことがあるんじゃないの?自分で本を書いてみたら」と言ってくれたのです。これが社交辞令なのか、本気なのか分からないまま、真に受けて執筆すること、さらに二年。

「読者が『ケアの本質』にたどりつく手前の本(読者と『ケアの本質』をつなぐ一冊)として、うちからあなたの本を出版しましょう」という話になって『まずはケアの話から始めよう』(山崎勢津子、2019年)が誕生することとなりました。推し愛の結晶ですね(笑)。そういう意味で、『ケアの本質』は私の人生にものすご~く影響を与えた一冊です。

1971年にアメリカで出版されたこの本が翻訳出版されたのが1987年。それ以来、ロングセラーとなっている「ケアする人」にとっての名著です。看護学校で課題図書となることも多いようですが、職業的にケアをする人だけでなく、子どもをケアする/友人をケアする、はたまた作品をケアする、に至るまで、実にさまざまなケアを広く扱っているので、ケアに関心がある方ならどなたでも当てはまる内容ではないかと思います。

この本は「ケアとは何か」にとどまらず、ケアが人生に与える意味というところにまで踏み込んでいます。一部、引用しますと「ケアにたずさわると、その周辺の活動および価値がおのずと序列化されてくる。(中略)ケアを心がける親は、以前には気づきもしなかった、子供たちの福祉や成長に関係する社会的要因の重要性を認識するのである。」といった具合です。ケアをすることで、ケアする/される双方が変化し、成長し、生きる意味が深まっていく、そのプロセスそのものの重要性についても書かれています。ああ、素敵。
 
…で、私がコツコツ訳した文章はどうなったか?ですか?
翻訳権が切れるのが2049年なので、25年後に出版予定です(←ほんまかいな!?)。あてにせず、お待ちください。

#Organic-39 やまさきせつこ

タイトルケアの本質 -生きることの意味-
著者名ミルトン・メイヤロフ